従来のRAGでは、画像や音声を検索に活かすことはできませんでした。
この課題を解決するのが、画像・音声・動画などを統合的に扱える「マルチモーダルRAG」です。
この記事では、マルチモーダルRAGの仕組みや使い方について、わかりやすく解説します。
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マルチモーダルRAGとは?画像文書に対応したRAGをデモで解説【8/27開催】
開催日時:
2025年8月27日(水) 14:00~15:00
内容:
- マルチモーダルRAGのしくみと実装方法をデモ交えて解説
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こんな方におすすめ!
- マルチモーダルRAGのしくみや実装方法を知りたい方
- 画像付き文書に対するRAGの精度を向上させたい方
- ローカル環境でLLMを活用したRAGシステムを構築したい方
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マルチモーダルRAGとは

マルチモーダルRAG(Retrieval-Augmented Generation)は、複数の情報形式(モダリティ)を統合的に扱い、検索と回答生成を行うAI技術です。
テキストだけでなく、画像・音声・動画・センサーデータなども対象に含める点が、従来のRAGと大きく異なります。
テキストによる質問に対して、テキストベースの文書から関連情報を検索し、大規模言語モデル(LLM)が回答を生成するという構造でした。つまり、「入力も検索対象も出力も、すべてがテキスト」に限定された仕組みです。
一方、マルチモーダルRAGでは、製品の操作動画や取扱説明書の画像、エラー発生時の音声記録など、複数の形式の情報を同時に扱うことができます。
これは、人間が視覚や聴覚などの五感を通じて状況を理解するプロセスに近いアプローチです。
GoogleのGeminiのような大規模マルチモーダルモデルの登場により、この分野の技術は加速度的に進化しており、AIの活用範囲を大きく広げる基盤技術として注目されています。
マルチモーダルとは何か?
想像してみてください。あなたが友人に道を尋ねるとき、言葉だけでなく、身振り手振りや周りの景色、時には地図アプリの画面まで使って説明しますよね?
実は、AIの世界でも同じような革新的な変化が起きているのです。
マルチモーダルRAGは、従来のテキストだけのAIから一歩進んで、まるで人間の五感のように複数の情報を同時に理解できる次世代のAI技術です。
マルチモーダルRAGが扱う主なモダリティには、以下のようなものがあります。
- テキスト(文章・単語など)
- 画像(写真・図解・イラストなど)
- 音声(話し声・操作音・環境音など)
- 動画(映像による手順や現象の記録)
- センサーデータ(温度・位置情報・生体情報など)
これらを単独で処理するのではなく、同時に理解・活用できることが、マルチモーダルAIの特徴です。
従来のRAGとの違い
質問:「この製品の使い方を教えて」
処理:テキストマニュアルを検索
出力:文字による説明のみ
質問:「この製品の使い方を教えて」
処理:マニュアル(テキスト)+ 使用動画 + 製品画像 + 音声解説を統合的に参照
出力:あらゆる角度からの包括的な回答
このように、情報の種類が増えることで、検索と生成の精度・柔軟性が大幅に向上します。

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マルチモーダルRAGとは?画像文書に対応したRAGをデモで解説【8/27開催】
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マルチモーダルRAGが注目される理由

マルチモーダルRAGが注目を集めている背景には、非構造化データの爆発的な増加と、それを活用するニーズの高まりがあります。
現代では、テキストだけでなく、画像・動画・音声・センサーデータなど、さまざまな形式の情報が日々生成されています。
その割合は、企業や組織が保有するデータ全体の90%以上にものぼるとされています。
マルチモーダルRAGは、これら複数のデータ形式を組み合わせて理解し、必要な情報を検索して回答や提案を生成できる時代にマッチした仕組みなのです。
たとえば、以下のような情報はすべて「非構造化データ」に該当します。
- SNSの投稿文やコメント
- Instagramの写真
- YouTubeの動画コンテンツ
- Podcastなどの音声ファイル
- 各種センサーログやユーザー操作ログ
こうした多様なデータを十分に活かせないまま放置してしまうのは、事実上、意思決定に使える情報の大半を取りこぼしていることに等しいと言えるでしょう。
マルチモーダルRAGは、これら複数形式の非構造化データを横断的に検索・理解し、文脈に応じた正確な情報抽出と回答生成を可能にする技術です。
見落とされがちだった情報資源から、新たな示唆や意思決定の根拠を引き出すことができるため、多くの企業で注目が集まっています。
実用例:カスタマーサポートの革命
従来の問い合わせ対応では、テキストチャットやメールを通じたやり取りが主流でした。
たとえば以下のような対応です。
従来の問い合わせ対応
- お客様:「アプリが動きません」
-
サポート:「どのような状況でしょうか?」
→ 文字でのやり取りが延々と続く…
このようなやり取りでは、状況把握に時間がかかり、顧客満足度の低下にもつながりかねません。
一方、マルチモーダルRAGを導入することで、対応は次のように変わります。
マルチモーダルRAG対応
- お客様:エラー画面のスクリーンショット + 「音が出ない」音声メッセージ
-
AI:画像から「接続エラー」を認識 + 音声から「音声問題」を把握
→ 「WiFi接続を確認し、音量設定をチェックしてください」
+ 解決手順の動画リンクを即座に提供
このように、複数の情報ソースを統合的に扱うことで、迅速かつ正確な問題解決が可能となります。
カスタマーサポートの効率化だけでなく、顧客体験の向上にも直結する事例です。
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マルチモーダルRAGの仕組み

マルチモーダルRAGは、テキスト・画像・音声など複数のモダリティに対応したエンコーダーを用いて、入力データを統一的なベクトル表現に変換し、検索・情報統合・応答生成のプロセスを経て、文脈に即した正確な回答を生成します。
大規模言語モデル(LLM)と、各モダリティ専用のニューラルネットワークを組み合わせることで、多様な情報形式を一貫して処理できる点が特徴です。
処理フローの全体像
マルチモーダルRAGの基本的な処理ステップは、以下のとおりです。
ユーザーからの質問や指示は、テキスト・画像・音声など多様な形式で入力されます。
入力形式に応じて、前処理や変換処理が行われます。
次に、モダリティごとのエンコーディングが行われます。
ここでは、各モダリティに対応したエンコーダー(例:テキスト用の自然言語処理モデル、画像用のコンピュータビジョンモデル、音声認識モデルなど)により、すべてのデータが共通のベクトル空間に変換されます。
この統一されたベクトル表現を用いて、大規模データベースから関連情報を検索する「情報の検索(Retriever)」のステップへと進みます。
統一ベクトルを用いて、ベクトルデータベースから関連情報を検索します。
従来のRAGはテキストに限定されていましたが、マルチモーダルRAGでは画像や音声も検索対象とすることで、より広範な情報検索が可能になります。
検索結果をもとに、LLMが回答を生成します。
必要に応じて、テキスト以外の出力(画像付き説明や音声回答など)も生成可能です。
主要な要素技術
マルチモーダルRAGシステムを構築するには、いくつかの主要な要素技術が必要です。
主には、テキストや画像・音声など多様なデータを扱える大規模言語モデル(MLLM)と、外部知識を参照するRAG技術が必要です。さらに、CLIPのような埋め込みモデルやベクトルデータベースによる検索、LangChainなどのツールで各技術を連携させて実装します。
- テキストだけでなく画像・音声・動画など多様なデータを扱える「マルチモーダル大規模言語モデル(MLLM)」と、外部知識を参照する「検索拡張生成(RAG)」が基盤技術となります。
- CLIPなどのモデルでデータをベクトル化し、ベクトルデータベースを活用したセマンティック検索や類似検索によって、関連情報を効率的に取得します。
- これらの技術を連携・管理するために、LangChainやLlamaIndexなどのオーケストレーションツールや、Python・TensorFlow・PyTorchなどの開発環境が利用されます。
様々なアプローチ
- モダリティ変換アプローチ
-
音声や画像、表形式データをテキストに変換し、テキストベースのナレッジとして管理・検索する手法(例:音声→テキスト、画像→キャプション化など)。
- 統合・分離ストアアプローチ
-
すべてのモダリティを同じベクトル空間に埋め込む、または主要なモダリティ(例:テキスト+画像説明)にまとめて管理・検索する手法、もしくはモダリティごとに異なるストアを用意し、検索・Rerankを行う手法。
- 今後の展望とポイント
-
高度な検索手法や知識の動的更新、説明可能性やパーソナライズ化なども含め、プロジェクトの目的やデータ特性に応じて最適なアプローチを選ぶことが重要になってきます。

マルチモーダルRAGの活用事例

マルチモーダルRAGは、その多様なデータ処理能力により、様々な分野で革新的なユースケースを生み出しています。
従来のRAGではテキスト情報に限られていたため、画像や音声、動画といった非テキストデータを含む複雑な情報を扱うことは困難でした。
しかし、マルチモーダルRAGの登場により、人間が五感を使って情報を理解するように、AIも複数のモダリティを統合的に分析し、より高度な問題解決や意思決定が可能になっています。
これにより、ビジネス、医療、教育、製造・建設業など、多岐にわたる業界で新たな価値創造と業務効率化が実現され、これまで不可能だった新しいユースケースが次々と生まれています。
主なマルチモーダルRAGのユースケース

マルチモーダルRAGのビジネス分野での活用
顧客対応の革新: 画像・音声・テキストを統合理解し、カスタマーサポートの処理時間を平均40%短縮
マーケティング強化: SNSの画像・動画・テキストを総合分析して、顧客感情やトレンドを深く把握し新たなインサイトを発見
社内効率化: PDF・動画マニュアルなど多様な形式の情報を横断検索し、製造業の現場保全やSaaS企業の売上向上を実現
医療分野でのマルチモーダルRAG活用
診断精度の向上: 電子カルテ・医用画像・音声・生体センサーデータを統合分析し、NEC等の研究では胸部X線・症状・咳音の組み合わせで肺疾患早期発見率が向上
医療AI性能の大幅改善: MMed-RAGシステムにより医療VQAとレポート生成の事実的正確性が平均43.8%向上し、手書き臨床ノートや画像形式文書も横断検索可能
医療現場の効率化: 類似症例検索の関連性判断を自動化し、医師の膨大な時間とコストを削減して患者ケアの質を向上


教育分野でのマルチモーダルRAG活用
個別化学習の実現: テキスト・画像・動画・音声を統合した教材生成により、生徒の学習スタイルに合わせた理解しやすいコンテンツを自動作成
教育効率の劇的改善: Recursive社の事例では、カリキュラムやマルチメディア教育資料の作成時間を大幅短縮し、教師の業務効率を最大90%削減
質問対応の高度化: 複数の情報源から最適な形式(視覚・聴覚要素含む)で回答を生成し、生徒の理解度向上とパーソナライズされた学習体験を提供
製造業・建設業でのマルチモーダルRAG活用
現場作業の高速化: 設計図面・CADデータ・マニュアル・映像・音声を統合分析し、過去事例検索AI化により現場保全作業を効率化、設備稼働率15%向上を実現
問い合わせ対応の自動化: スクリーンショットと簡単な説明入力だけで関連ドキュメントや過去事例を参照し、的確な解決策を即座に提示して対応工数を大幅削減
安全性の向上: 自動運転技術でカメラとレーダー情報を組み合わせた物体判断精度向上や、生産ラインの映像・機械音同時分析による不具合早期発見を実現


マルチモーダルRAGの未来を支える高性能GPU環境の重要性
マルチモーダルRAGは現在、画像・音声・動画など複数データ形式の統合処理、高速セマンティック検索、動的知識更新、説明可能なAI、パーソナライズ化など、多方面で革新的な研究が進められています。
今後は音声入力や常時画面共有による深い文脈理解が実現し、LLMの回答精度が飛躍的に向上すると予測されています。
しかし、これらの高度な技術を実現するには、膨大な計算リソースが必要です。
- マルチモーダルモデルの学習・推論:複数データ形式の同時処理には高性能GPU
- リアルタイム検索・更新:大規模ベクトルデータベースの高速処理
- 複雑な並び替え処理:Rank-Rerankアルゴリズムの効率的な実行
マルチモーダル機能を中核オペレーションに統合し、未知のユースケースに向けてAIサービスを拡張していくためには、スケーラブルで高性能なGPUクラウド環境が不可欠です。
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