「AIエージェント」という言葉を耳にした方もいるのではないでしょうか。
「生成AI」との違いがよくわからないという方のため、AIエージェントと生成AIそれぞれについて、また両者の違いについてわかりやすく解説します。
AIエージェントと生成AIの定義

AIの活用が進む中で、生成AIとAIエージェントは、特徴や役割が違う技術としての認識が進んでいます。
以下で、それぞれの定義を再確認してみます。
生成AIとは?
生成AIは、名前の通り「何かを生成する」ことに特化したAI技術です。
主に以下のような特徴を持っています。
- 大量のデータから学習し、そこから新しいコンテンツを生成することが得意
- 人間が入力する「プロンプト(指示文)」に基づき、テキスト、画像、音声、動画など多様なコンテンツをアウトプットできる
- 創造的な作業や表現が求められる領域で活用が進む

AIエージェントとは?
一方でAIエージェントは「自律的に行動しタスクを達成する」ことを目的としたAI技術です。
生成AIとは違い、以下のような特徴があります。
- 特定の目標を設定すると必要な情報を収集し、計画を立て、行動し、タスクを実行
- 自律性と意思決定能力により、人間の指示を待たずに複雑な仕事を進める機能を持つ
- 人間とチームメンバーとして協働するような役割も担える

AIエージェントと生成AIの技術的な違い

生成AIは「創造」、AIエージェントは「行動」にフォーカスするという違いがありますが、この違いは、モデル設計や入出力処理にも反映されています。
モデル設計の違い
生成AIは、「生成すること」に特化したモデル設計がされており、その目的は「新しいコンテンツを創造すること」です。
生成AIの代表的なアーキテクチャであるTransformerは、自然言語処理やテキスト生成に優れた性能を発揮しています。
Transformerは、画像生成に特化した生成モデルと識別モデルが競争的に学習することで、高品質な画像を生み出す技術です。
一方、AIエージェントのモデル設計は、「目標を達成させること」に重点を置くことから、強化学習の技術が用いられています。
強化学習では、環境からのフィードバックを学び、それを基にして最適な行動を選択します。
また、複雑な意思決定を行うアルゴリズムや、多様なデータ(テキスト、音声、画像など)を統合的に処理するマルチモーダルモデルもAIエージェントにおいて重要な役割を果たしているのです。
入力・出力の処理の違い
生成AIの場合、入力は非常にシンプルで直感的です。ユーザーは「プロンプト」と呼ばれるテキスト指示や条件を入力するだけで、新しいコンテンツを得ることができます。
生成AIはこの入力を元に、学習したデータを活用して新しいテキストや画像を出力します。出力物は高品質でクリエイティブなものとなりますが、その生成物を活用するかどうかは、ユーザーや別のシステムに委ねられているのです。
生成AI自体は生成物を利用してさらなる行動をとる機能を持たない点が特徴です。
一方、AIエージェントの入力処理は、より複雑で動的です。現実世界やシステムから得られる多様なデータを分析し、状況に応じた判断を行います。
出力に関してもAIエージェントは、単なる生成物を提供するのではなく、具体的な行動を実行します。
AIエージェントは生成AIの出力を利用しながら、それを基に意思決定を行い、さらなるアクションを実施する点が生成AIとの大きな違いと言えるでしょう。

AIエージェントと生成AIの活用場面の違い

AIエージェントと生成AIでは、その用途や適用領域が異なります。
ここでは、それぞれの主な活用場面を具体的に説明します。
生成AIの主な活用領域
生成AIは、新しいコンテンツを生み出すことに特化した技術で、以下のような作業に使われています。
テキスト生成
テキスト生成では、ブログ記事やコピーライティング、メール文面の作成などが挙げられます。
画像生成
広告やデザインの分野でユニークなイラストを生み出し、活用されています。
音声や映像の生成
ナレーションの生成や動画生成が、エンターテイメントや教育分野で活用されています。

AIエージェントの主な活用場面
AIエージェントは自律的に行動するのが特徴で、以下のような場面で活用が広がっています。
自律的なカスタマーサポート
チャットボットとして顧客の質問に答え、問題解決に向けた適切な行動をとるなど、人手不足の解消にも役立っています。
スケジュール管理やタスクの自動化
会議の設定、備品発注、リマインダー送信など、日常業務を代行しています。
データ分析や意思決定サポート
これまでは、膨大なデータ処理に時間がかかり、意思決定も先延ばしになりがちだった内容でも、AIエージェントのおかげで最適解を見つけやすくなっています。

AIエージェントや生成AIを利用する上での課題

活用が進むAIエージェントや生成AIですが、以下のように利用する上での課題も存在するのが現状です。
信頼性の問題
AIはすべて学習データに基づいて動作するため、不完全なデータや偏りのある情報から誤った回答、もしくは生成物を出すことがあります。
とくに企業でAIによる回答が誤った内容であると、信頼性を失うことになりかねません。厳重なチェック体制が必要となるでしょう。
倫理とプライバシーの問題
不適切なコンテンツが生成されるケースやAIエージェントが独自の判断でデータを不正利用するケースが考えられます。
また、利用するデータに機密情報や個人情報が含まれていると、将来第三者の回答に表示されてしまうというリスクもあるため、取り扱いに注意が必要です。
運用コストと専門知識の必要性
AIエージェントや生成AIを導入するには、コストの負担も課題です。
とくに企業で導入される高度なAIは、初期費用に加えて維持費用もかかります。
専門知識を持たずに利用してしまうと、AIの能力を最大限に生かすどころか、かけた費用がムダになってしまう可能性もあるため、ガイドラインの設定、研修や教育などが重要になるでしょう。

AIエージェントと生成AIの違いを理解して適材適所で活用しよう
AIエージェントと生成AIは、それぞれ異なる目的と特徴を持つ技術です。
自律的な行動ができるAIエージェントのほうが技術的に進化していると言えますが、どのような場面でも活用できるというわけではありません。活用したい場面に応じて使い分けることが必要です。
将来人間のように行動できるAIが主流となり、「エージェント」や「生成」などの言葉が使われないような時代が来るかもしれません。