NVIDIA A100は、トレーニングや実行に特化した、非常に高性能なGPUで、AIを作るときや動かすときに必要な計算を速く、効率的にこなせる特別なコンピュータパーツです。
この記事ではNVIDIA A100のすごさを解説していきます。
NVIDIA A100とは?

NVIDIA A100は、AI、データ分析、高性能計算を劇的に高速化する強力なGPUです。
GPUについてはこちらに詳しい記事がありますのでご参照ください。

NVIDIA A100は、2020年5月14日に発表され、販売が開始されました。
その後、2021年6月28日に新たにラインナップされたNVIDIA A100-PCIe 80GB HBM2eは、メモリ容量が従来の2倍(40GB → 80GB)になり、メモリ帯域も25%向上(1,935GB/s)しています。
これにより、さらに大規模なAIモデルやデータセットにも対応が可能になりました。
現在でもAIの学習や推論を高い精度で処理し、画像生成AIや大規模言語モデル用として効率よく第一線で利用されています。
NVIDIA A100がすごい理由

NVIDIA A100は、AIやデータ解析の分野で大きな貢献を果たしたGPUです。
ディープラーニングのモデルを素早く処理したり、科学研究をより効率的に進めたりするための新しい基準をA100が作ったといっても過言ではありません。計算の効率が高く、消費電力も抑え、パフォーマンスと省エネの両方を実現しています。
画像分類、物体検出、自然言語処理といったタスクのベンチマークで、前世代のGPUを大きく上回ってきました。
ここでは、NVIDIA A100がどれだけすごいのか、主な特徴をまとめました。
- 「Ampere」アーキテクチャの採用
- GPUコア「GA100」がすごい
- CUDAで高性能コンピューティング
「Ampere」アーキテクチャの採用
Ampereアーキテクチャは、NVIDIAが開発したGPUアーキテクチャで、GeForce RTX 30シリーズやNVIDIA A100 GPUなどに搭載されています。
前世代のTuringアーキテクチャと比較して大幅に進化し、とくにワット当たりの性能が最大1.9倍向上しました。その結果、電力効率が改善されています。
Ampereアーキテクチャには、108個のSM(ストリーミングマルチプロセッサ)が搭載されており、それぞれに以下のような計算ユニットが含まれています。
- 第3世代Tensor Core(4個):AIやディープラーニングの計算を加速
- CUDA Core(64個): 一般的な並列計算処理を担当
Ampereアーキテクチャでは、AIの計算効率を高めるために「スパース性」の活用が強化されました。
AIの計算では、大量のデータを処理しますが、その中には「ほとんど影響を与えないデータ」も含まれています。スパース性を活用することで、この不要なデータを間引き、重要な部分だけを効率よく計算できます。
Ampereアーキテクチャの導入により、A100は従来のGPUよりもAI処理やデータ解析がより高速かつ効率的に行えるようになり、幅広い分野で活用が進んだのです。
GPUコア「GA100」がすごい
GPUコア「GA100」とは、NVIDIAが開発したAmpereアーキテクチャに基づくGPUコアで、高性能コンピューティング(HPC)やAI、ディープラーニング向けに設計されたプロセッサです。
GA100は6個のHBM2モジュールと12個の512bit HBMコントローラーを搭載しています。
初期バージョンはメモリ容量40GB、帯域幅1,555GB/秒だったのに対し、新バージョンでは80GB、2TB/秒と大きく性能が向上しているのが特徴です。
GA100は、高帯域幅で大規模データ処理を効率化します。
CUDAで高性能コンピューティング
CUDA(Compute Unified Device Architecture)は、NVIDIAが開発した並列計算用のプラットフォームおよびプログラミングモデルです。
CUDAは、NVIDIA製GPUを使った並列計算を可能にする開発ツールで、グラフィックス以外の汎用計算(GPGPU)を実現します。
C、C++などのプログラミング言語と互換性があり、AI、科学計算、映像処理、金融モデリングなど幅広い用途で計算高速化が可能です。
NVIDIA GPU専用に設計され、並列処理や専用ライブラリ(cuBLAS、cuDNNなど)を提供して科学技術やAI分野の効率化に大きく貢献しています。
A100 80GB PCIeとA100 80GB SXMの比較表は以下になります。
項目 | A100 80GB PCIe | A100 80GB SXM |
---|---|---|
FP64 | 9.7 TFLOPS | 9.7 TFLOPS |
FP64 Tensor コア | 19.5 TFLOPS | 19.5 TFLOPS |
FP32 | 19.5 TFLOPS | 19.5 TFLOPS |
Tensor Float 32 (TF32) | 156 TFLOPS | 312 TFLOPS |
BFLOAT16 Tensor コア | 312 TFLOPS | 624 TFLOPS |
FP16 Tensor コア | 312 TFLOPS | 624 TFLOPS |
INT8 Tensor コア | 624 TOPS | 1248 TOPS |
GPU メモリ | 80GB HBM2e | 80GB HBM2e |
GPU メモリ帯域幅 | 1,935 GB/秒 | 2,039 GB/秒 |
最大熱設計電力 (TDP) | 300W | 400W |
マルチインスタンス GPU (MIG) | 最大 7 基の MIGs @ 10GB | 最大 7 基の MIGs @ 10GB |
フォーム ファクター | PCIe(デュアルスロット空冷またはデュアルスロット液冷) | SXM |
相互接続 | NVIDIA NVLink Bridge(2 GPU 用: 600GB/秒)、PCIe Gen4: 64GB/秒 | NVLink: 600 GB/秒、PCIe Gen4: 64GB/秒 |
サーバー オプション | 1~8 GPU 搭載のパートナーおよび NVIDIA-Certified Systems | NVIDIA HGX A100(4、8、16 GPU 搭載のパートナーおよび NVIDIA-Certified Systems)、8 GPU 搭載の NVIDIA DGX A100 |
NVIDIA A100 vs 他GPU製品比較

それでは、NVIDIA A100とその他にラインナップされているGPU製品を性能面で比較してみます。
A100は、ハイエンドとローエンド製品のちょうど真ん中あたりに位置しますが、NVIDIAエンタープライズ(サーバー利用)向けのGPUは、ローエンド製品でも十分な高性能です。
NVIDIA H200 Tensor Core GPU | NVIDIA H100 Tensor Core GPU | NVIDIA A100 Tensor Core GPU | NVIDIA L40S | NVIDIA A40 Tensor Core GPU | |
---|---|---|---|---|---|
FP64 | 34 TFLOPS | 24.0 TFLOPS | 9.7 TFLOPS | - | - |
FP64 Tensor コア | 67 TFLOPS | 48.0 TFLOPS | 19.5 TFLOPS | - | - |
FP32 | 67 TFLOPS | 48.0 TFLOPS | 19.5 TFLOPS | 91.6 TFLOPS | 90.5 TFLOPS |
TF32 Tensor コア(スパース性機能) | 989 TFLOPS | 400 TFLOPS (800 TFLOPS) | 156 TFLOPS (312 TFLOPS) | 366 TFLOPS | 90.5 TFLOPS (181 TFLOPS) |
BFLOAT16 Tensor コア(スパース性機能) | 1,979 TFLOPS | 800 TFLOPS( 1,600 TFLOPS) | 312 TFLOPS (624 TFLOPS) | 733 TFLOPS | 181.0 TFLOPS (362.1 TFLOPS) |
FP16 Tensor コア(スパース性機能) | 1,979 TFLOPS | 800 TFLOPS (1,600 TFLOPS) | 312 TFLOPS (624 TFLOPS) | 733 TFLOPS | 181.0 TFLOPS (362.1 TFLOPS) |
FP8 Tensor コア(スパース性機能) | 3,958 TFLOPS | 1,600 TFLOPS (3,200 TFLOPS) | - | 1,466 TFLOPS | 362 TFLOPS (724 TFLOPS) |
INT8 Tensor コア(スパース性機能) | 3,958 TFLOPS | 1,600 TFLOPS (3,200 TFLOPS) | 624 TFLOPS (1,248 TOPS | 1,466 TFLOPS | 362 TFLOPS (724 TFLOPS) |
倍精度演算性能 | - | - | - | - | - |
単精度演算性能 | - | - | - | - | - |
GPUメモリ | 141GB | 80 GB HBM2e | 80 GB HBM2e | 48 GB GDDR6 | 48 GB GDDR6 |
NVIDIA A100の価格情報

NVIDIA A100-80G [PCIExp 80GB]は、すでに販売を終了しています。
販売時の価格を確認すると、取り扱いが開始された2023年2月1日時点で取引価格は1,922,300円でした。
その後、取引価格は上昇を続け、販売が終了した2024年9月には3,299,812円になりました。
NVIDIA A100を手軽に使うには?
販売時の価格も非常に高額なNVIDIA A100は、現在も中古商品が流通しています。新品商品はもちろんのこと、中古でも入手が困難な状況になっており、価格のハードルが非常に高いパーツです。
そこで、少しでも手軽に利用したい方には、GPUクラウドがおすすめです。
やっぱりNVIDIA A100はすごかった!
NVIDIA A100は、価格こそ非常に高価ですが、その分スペックが大変優れたGPUです。
現時点(2025年3月)で後継機の発売は発表されていませんが、AIが進化するにつれてA100クラスのGPUが手軽に個人で利用できる未来が待ち遠しいです。